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冠者殿社と誓文払い

冠者殿社(かじゃでんしゃ・かんじゃでんしゃ)は八坂神社の境外摂社で、祇園祭で神輿が奉安される御旅所(おたびしょ)の西隣にあります。
(八坂神社の御朱印授与所では、こちらの神社の御朱印をいただけます。)
元は烏丸通高辻にあった大政所御旅所(おおまんどころおたびしょ)に祀られていましたが、豊臣秀吉の命で御旅所が現在地へ移された際に、万寿寺通高辻へ移されさらに現在の地へ移されたと伝わります。(官社殿社とも書かれ、旧地の万寿寺通高辻には官社殿町という町名が残ります)

御祭神は素戔嗚尊(スサノヲノミコト)。
また平安時代末期の僧で武将の土佐坊昌俊(とさのぼうしょうしゅん)も祀られているといわれます。
誓文払い発祥の地といわれ、商人や花街の遊女から信仰されてきました。

誓文の神(起請文の祖神) 素戔嗚尊

誓文(せいもん)とは簡単に言うと、
~を神様に誓います。もし破ったら神罰をお受けしますと約束し、書き起こしたもので起請文(きしょうもん)とも言います。
なぜ素戔嗚尊(スサノヲノミコト)が御祭神かというと、天照大神(アマテラスオオミカミ)との間で誓約(うけい)を行い身の潔白が証明された神話によるものです。

スサノヲもアマテラスも伊弉諾尊(イザナギノミコト)が、出産で火傷を負い亡くなってしまった伊弉冉尊(イザナミノミコト)を取り戻すため黄泉の国を訪れ、後に禊(みそぎ)をしたときに生まれた神で、月読命(ツクヨミノミコト)と共に、三貴子と呼ばれます。
貴い三柱の子を得たと喜んだイザナギは、アマテラスには高天原を、ツクヨミには夜をスサノヲには海原の統治をそれぞれ命じます。
ですが、スサノヲは命令に従わずひげが伸びるほど成長しても泣きわめくばかり、理由を問いただすと、イザナミのいる根の堅州国へ行きたいといいます。
怒ったイザナギに追放され、イザナミの元へ行く前に姉のアマテラスに挨拶をしたいと、高天原を訪れますが、高天原を奪いに来たと勘違いされてしまいます。
そこで身の潔白を証明するために行われたのが「誓約(うけい・うけひ)」です。
うけいとは一般に占いの一種で、あらかじめ決めておいた事柄のどちらの結果が出たかで吉凶や成否を判断することです。

古事記ではお互いの持ち物を交換し、そこから生まれた神の性別で判断することになり、アマテラスはスサノヲの十拳剣(とつかのつるぎ)を噛み砕いて吐き出すと三柱の女神が、スサノヲはアマテラスの勾玉をかみ砕いて吐き出すと五柱の男神が生まれました。
スサノヲは自分の持ち物から優しい女神が生まれたのは、自分の心が清い証拠だと宣言して、結果スサノヲの勝利ということに・・・
日本書紀では持ち物を交換せず、男神が生まれたことを潔白の証としている記述もありますが、とにかくどちらもスサノヲの勝利とされ、このことから起請文の祖神・誓文の神とされます。
(この時生まれた三柱の女神は宗像三女神といわれ、八坂神社境内にある美しくなる水で人気の美御前社でも祀られています)

誓文払い=大安売り

おもに西日本では誓文払い=大安売りのイメージがあると思いますがまさにそのもとになったのが、この神社です。
仕事柄、誓約を大切にする商人ですが、商売の駆け引きで時には嘘をついてしまうことがあります。
京阪神の商人が冠者殿社の祭礼日10月20日に、その罪を免除してもらうことを願い、より良い商いができることを祈願し、罪滅ぼしに奉仕販売(安売り)を行ったのが、全国に広がったといわれます。

地元の商店街では誓文払いに合わせて、大福引大会が行われています。
10月20日に御旅町商店街(公式サイト)でお買い物をすると福引券がもらえ大福引きに参加できます。
当日神社前では商売繁盛の「冠者殿社の御神符」が授与されています。

旧暦や新暦の10月20日前後にえびす講または20日えびすと称して、各地で安売りイベントなど様々な行事が行われています。
もともと10月の神無月に各地の神様が出雲に集まってしまうので、その留守番を任されたえびす様を慰めようと始まったお祭りが同じ日だった事と、えびす様が商売の神様として信仰されることから、誓文払い=大安売り=えびす講といつしか混同されていったといわれます。

花街の遊女たちは、お客の心をつなぎとめるために、心変わりしないことを誓ってうその誓文や恋文を書くことがあり、このうそを許してもらうために参拝するようになり、信仰を集めたとも言われています。

もう一柱の御祭神 土佐坊昌俊

もう一柱の御祭神といわれるのが土佐坊昌俊(とさのぼうしょうしゅん)です。
平安末期、源頼朝の命を受け義経を追討するために上洛し、熊野詣を装って義経の堀川邸を訪れ探りを入れます。
その際、誓文を書き追討のための上洛ではないことを誓いますが、誓文を破り捨てその夜のうちに義経邸に夜襲をかけ、襲撃に失敗し捕らえられてしまいます。
斬首されるときに誓文を破り捨てたことを悔い「忠義のために偽りの誓約をしたものの罪を救わん」と願をかけたといわれ、このことから誓文返し、起請返しの神として祀られることになったといわれます。

冠者殿社以外の八坂神社や境内境外の摂社末社などについては
八坂神社 神水~心が美しくなる美容水ページをご覧ください。

冠者殿社アクセス&周辺地図&ちょっとおススメ

・八坂神社西楼門階段下前の「祇園バス停」からは西へ徒歩12~13分ほど

・市バス4系統(四条河原町・上賀茂神社行き)・5系統(岡崎公園 平安神宮 銀閣寺・岩倉行き)・7系統(四条河原町・銀閣寺行き) ・105系統(平安神宮・銀閣寺行き) ・205系統(四条河原町・北大路バスターミナル行き)などで「四条河原町」で下車して3分ほど

・JR京都駅からJR奈良線で「東福寺駅」へ、となり「京阪・東福寺駅」で(出町柳行き)に乗り換え「祇園四条」下車して3番出口から徒歩6分ほど

八坂神社から四条通りをとにかくまっすぐ歩いてゆけばたどり着きますので、京都の繁華街を楽しみながらのんびり歩いて行くのもおススメです。
(途中には花見小路通があり、入口には大石内蔵助が豪遊したとも、西郷隆盛や大久保利通も通ったともいわれる一力亭目やみ地蔵の仲源寺、歌舞伎の南座、四条大橋、鴨川、高瀬川、また芸舞妓さん御用達のかんざし小物屋さん等々、土産物屋さんも沢山あります。
あちこち冷やかしながらぶらぶら歩いていればあっという間です。

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