慈覚大師円仁が中国山東省の魚山より請来した「声明」の根本道場として835年に創建され、寂源上人によって1013年に再興され勝林院と名付けられました。
また法然上人が大原問答を行った地として知られ、通称「問答寺」と呼ばれ法然上人二十五霊場の第二十一札所になっています。
魚山大原寺勝林院と称し、江戸時代には4つの僧坊がありましたが現在は統合され実光院・宝泉院が子院として残ります。
なお大原寺は勝林院を下院、来迎院を上院としています。
勝林院・実光院・宝泉院見どころとアクセス
経文や真言を美しい旋律で唱える声明(しょうみょう)。大原の里に響き渡るこの美しい仏教音楽は日本歌謡の原点とも呼ばれます。
勝林院では天台声明が受け継がれ、宝泉院では常にBGMとして流れています。
JR京都駅からアクセス&拝観時間など
1・京都バス17系統(大原行き)で「大原」下車して東へ徒歩10分ほど
2・地下鉄烏丸線(国際会館ゆき)で終点下車して、京都バス19系統(大原・小出石行き)に乗り換え「大原」で下車して東へ徒歩10分ほど
拝観時間・拝観料
勝林院 | 9:00~17:00 | 大人300円・中学生・小人200円 |
実光院 | 9:00~16:30 | 中学生以上700円・小人300円 (抹茶・菓子付き) |
宝泉院 | 9:00~17:00(16:30受付終了) | 大人800円・中高生700円・小人600円 (抹茶・菓子付き) |
宝泉院 春の夜灯り 秋の夜灯り |
17:50~21:00(20:40受付終了) |
春の夜灯り 秋の夜灯り 大人800円/中高生700円 |
勝林院 大原問答・証拠の阿弥陀
三千院の門前から北へまっすぐに続く緩やかな階段を下っていけばすぐに勝林院へたどり着きます。
ご本尊の阿弥陀如来は「証拠の阿弥陀」と呼ばれています。
1186年に天台宗の顕真(けんしん)に招かれた浄土宗の祖・法然上人が他宗派の高僧ら300人余りと念仏の教えについて問答した際に、この仏さまの手から光明が放たれ念仏によって衆生が救われるという教えが正しいことを証明したといわれる故事が「大原問答」として伝わっています。
手元からは五色の紐が伸びこの紐を握ることで阿弥陀様との縁を結ぶことができます。また白い紐は葬儀の際に使われるそうです。
本堂ではほかにも法然上人像や踏出阿弥陀像が拝観でき、重要文化財に指定される石造宝筐印塔(ほうきょういんとう)や平安時代作と伝わる梵鐘もあり、この鐘は大晦日にのみ撞かれます。
実光院 声明関連資料がずらり
三千院から勝林院へと至る参道の途中に位置します。
統合された旧普賢院庭園には江戸時代作庭の池泉鑑賞式庭園(契心園・けいしんえん)が、旧理覚院庭園には先代住職が作り上げた回遊式庭園があり秋から春にかけて咲く「不断桜」が有名です。
桜と紅葉が一緒に鑑賞できる珍しいスポットで、お抹茶とお菓子で一服しながら福寿草にはじまり四季折々に咲く多くの花々を、眺めて巡って楽しむことができる庭園です。
客殿にはご本尊の地蔵菩薩座像と脇侍に不動明王像・毘沙門天像が祀られ、江戸時代に狩野派絵師によって描かれた「三十六歌仙」が欄間に掲げられています。
また歴代住職が集めた「声明」に使われる関連資料や、石で造られた調音器などが展示されています。
宝泉院 こんなところにも血天井が・・・
勝林院のすぐ西側に位置し声明の専門研究をする寺院として平安時代に創建されました。
こちらは樹齢700年・近江富士をかたどった五葉松(市指定の天然記念物)や客殿の柱と柱を額縁に見立てた「額縁庭園」が有名で、盤桓園(ばんかんえん・立ち去りがたいの意味)と呼ばれます。
また部屋から格子越しに眺める鶴亀庭園には樹齢300年の沙羅双樹が佇み二連式の水琴窟は訪れる人々を心地よい音で癒します。
こちらもお抹茶・お菓子をいただきながらゆっくり鑑賞できます。
そしてこんなに静かで美しい庭には不似合いな血天井です。
関ヶ原の前哨戦で豊臣軍と戦い、伏見城で自刃した徳川方の忠臣・鳥居元忠ら数百名の供養のためにその際の床を天井として祀っているもので、ほかにも養源院・正伝寺・源光庵・興聖寺に残ります。
春と秋には庭園がライトアップされ、声明などのイベントが行われています。
京都駅からはバスで一時間あまり、都会の喧騒を離れゆっくりとした時間の流れる大原の里で声明に触れ、美しい庭園を眺め心身ともにリフレッシュされてはいかがでしょうか。