白沙村荘は日本画家・橋本関雪が自身のアトリエとして造営した邸宅です。広大な敷地には大正から昭和初期にかけて建築された建物が散在し、池泉回遊式庭園は国の名勝に指定されています。
白沙村荘のみどころとアクセス
一万平方メートルの敷地のうちおよそ七割が関雪自身の設計による池泉回遊式庭園になっています。
大文字山を借景とする庭園には蒐集品(しゅうしゅうひん・コレクション)の石灯籠や石仏が配され、邸宅・アトリエ・茶室・持仏堂があります。2014年には美術館が開館し1階では関雪の作品や日本・中国・ギリシャの古美術などのコレクションの展示、2階では企画展示が開催されることもあり、展望テラスからは庭園を眺めることもできます。庭園隣接の「お食事どころはしもと」で予約をすれば、記念館庭園内のお座敷で会石料理を楽しむこともできます。
また関雪の西洋美術コレクションハウスとして建てられた洋館では、ヨーロピアンレストラン「ノアノア」が営業されパスタやピッツァがランチやディナーで楽しめるほか、オープンガーデンでウェディングパーティーなどの行えるプランもあります。
入館時間と料金
白沙村荘・橋本関雪記念館
開館時間 | 入館料 |
10:00~17:00 季節によって変更になる場合があります |
大人 1300円 |
学生 500円 (大学生以上、学生証をお持ちの方全て) |
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高校生以下無料 | |
通常非公開の瑞米山(ずいべいざん・主家)、倚翠亭(いすいてい)・憩寂庵(けいじゃくあん)(共に茶室)、持仏堂の地蔵尊立像(重要文化財)などの特別公開をご希望の場合には、白沙村荘事務局までお問い合わせ下さい(075-751-0446) |
お食事どころはしもと
営業時間 | メニュー |
11:00~17:00(ラストオーダー16:30) | 季節のお任せ御前 2000円 うどん類 900円~ お抹茶とお菓子 700円 など |
17:00~ | 完全予約で6000円~ |
白沙村荘でのお食事 11:00~15:00 (お問い合わせは075-771-0461 11:00~17:00まで) |
予約制 会席料理4000円~10000円 (記念館への入館料は別途必要です) |
レストランNOANOA(ノアノア)
営業時間 | メニュー |
11:00~21:00(ラストオーダー20:30) | パスタ900円~ ピッツァ900円~ ランチコース(要予約)2500円~ ディナーコース3000円~ |
ウェディング・パーティープラン (お問い合わせは075‐771-4010 11:00~21:00) |
8000円~ |
会合プラン | 5000円~ |
JR京都駅からのアクセスと周辺の観光名所
1・市バス100系統(清水寺・銀閣寺行き)で終点の「銀閣寺前」下車してすぐ
2・市バス5系統(銀閣寺・岩倉行き)で「銀閣寺道」下車して徒歩5分ほど
3・市バス17系統(錦林車庫行き)で「銀閣寺道」下車して徒歩5分ほど
周辺の観光名所
白沙村荘は琵琶湖疏水沿いの銀閣寺参道入口付近にあるので、東へ5分ほど橋を渡って坂道(参道)を歩けば「慈照寺(銀閣寺)」へ着きます。橋を渡らずに疏水沿いを南へ行けば「哲学の道」が約2㎞にわたって続き、2分も歩けば「幸せ地蔵尊」の弥勒院があります。(余談ですが境内前にはちょっとした休憩のできるベンチが置かれていて、南側から歩いてきてこのお地蔵さまののぼりが見えてくるとそろそろ銀閣寺だなと感じます。)
哲学の道には所々に東側へ渡る橋が何本か架かり、銀閣寺前から南北へ続く道へつながり、そちらの道沿いには「法然院」「安楽寺」「霊鑑寺」など通常は非公開ながら期間限定で公開される寺院があります。他にも狛ねずみのある「大豊神社」、哲学の道の南側入り口には八咫烏(やたがらす)がシンボルの「熊野若王子神社(くまのにゃくおうじじんじゃ)」があります。(熊野若王子神社の境内には休憩スペースがあり自販機が設置されています。社務所に声をかけるとトイレをお借り出来ますが、マナーよくしてきちんと神社にお参りしましょう。約2㎞続く哲学の道ですが、銀閣寺付近に公衆トイレがあるだけで途中にはありません。)
周辺のお食事処
哲学の道には食事やお茶のできるカフェや甘味処、漆塗りのお店や雑貨屋さんなどおしゃれで素敵なお店が沢山あります。40年続く「京湯どうふ㐂さ起(きさき)」では湯豆腐や京料理がいただけます。江戸時代から続く老舗のお菓子屋さん「五建外良屋(ごけんういろや)」では庭を眺めながら甘味や軽食をいただけます。あぶらとり紙で有名な「よーじやさん」のカフェでは庭園を望めるお座敷で甘味を、予約をすれば2階でお弁当もいただけ、もちろんグッズの販売もされています。「叶 匠寿庵(かのう しょうじゅあん)」では甘味やお弁当のほか、要予約でイスとテーブルのお茶席でのお点前も楽しめます。少し離れますがつたのからまる趣のある洋館「GOSPEL(ゴスペル)」ではケーキや洋食がいただけます。他にも外観に趣のあるお店が多くあり、散策しながら自分なりのお気に入りを見つけるのも楽しいでしょう。
橋本関雪について
旧明石藩の儒学者だった父の影響を受け、幼少の頃より漢学・和歌・詩書(中国古典)に親しみ、画の道を志し四条派の片岡公曠(かたおか こうこう)、近代日本画の先駆者・竹内 栖鳳(たけうち せいほう)に師事しています。
たびたび中国を訪れ「木蘭詩(もくらんし)」「長恨歌(ちょうごんか)」など中国の古典や漢詩を題材にした絵画のほか、写実的な動物画も多く発表し、昭和天皇の直賛を受けた「玄猿」によって「猿の関雪」と呼ばれます。新古典主義と分類される作品を残し、帝室技芸員(戦前の皇室による美術工芸作家の保護や製作の奨励を目的にもうけられた顕彰制度で、年金を受ける一方で勅命による作品制作や技術に関する諮問に応じる義務がありました)に選定され、フランスのシュバリエドレジョン・ドヌール勲章を受賞しています。
関雪と庭園
関雪は晩年「庭を造ることも、画を描くことも一如不二」(等しく一つのごとし)と語ったように、「蟹紅鱸白荘(カイコウロハクソウ現・白沙荘)」兵庫県明石市・「走井居(はしりいきょ)」滋賀県大津市・「冬花庵」宝塚市、と別邸として造営された邸宅にもそれぞれ庭園を作り、生涯にわたって作庭を続けました。(走井居は10名以上の申し込み制での公開か、手打ちそばの提供される限定公開も行われています。西側にある瑞米山月心寺(ずいべいさん げっしんじ)には関雪と夫人の墓所があります。)
白沙村荘は一万平方メートルの広大なキャンバスに描かれた絵画ということなのでしょう。庭園内に置かれる石の位置一つ一つまで細かく指示を出したといわれます。中国の風物なども巧みに取り入れた独自の近代庭園は国の名勝に指定されています。
主家(瑞米山・住居部分)、存古楼(ぞんころう・アトリエ)、倚翠亭(いすいてい)・憩寂庵(けいじゃくあん)・如舫亭(にょほうてい)(茶室群)、持仏堂(重要文化財のお地蔵様が祀られる)などの建物があり、予約をしておくと通常非公開の茶室内部や持仏堂も見せていただけます。
再建された茶室
2009年に焼失してしまった倚翠亭(いすいてい)・憩寂庵(けいじゃくあん)ですが2012年には再建されています。倚翠亭から池を眺めると「逆さ大文字」が写って見えることでも知られ、憩寂庵は高台寺圓徳院の茶室を模したものといわれます。時代劇のロケに使われたこともある庭園は四季折々に美しい景色を見せ、銀閣寺への観光客であふれる周辺の喧騒がうそのような空間が広がります。