京都の夏の風物詩として祇園祭と並んで五山の送り火があります。
京都三大祭(葵祭・祇園祭・時代祭)に加えて、京都四大行事とも呼ばれ、
お盆にお迎えしたご先祖様の霊をふたたび冥府に送る行事です。
各寺院で迎え火や迎え鐘をついてお迎えし、送り火や送り鐘でお帰りいただきますが
その最大の物が五山の送り火になります。
もちろん各寺院でも万灯会など送り火の行事はあります。
(こちらは別ページでご案内します)
点火は右大文字から順番に
8月16日20:00~
5分ごとに右の大文字山から順に点火されます。
各所の護摩木の受付はなくなり次第終了になりますので
時間はあくまでも目安にしてください。
(護摩木とは先祖の供養や生存する私たちの無病息災を記す短冊状の木で、
護摩壇などで焚き上げてもらい願いをかなえてもらうものです。
五山送り火の場合、集められた護摩木は各山で法要が行われた後に
火床での点火材として山に運ばれます。)
点火される山は京都新聞公式サイトをご覧ください。
当日はお天気が良ければ大変な混雑が予想され
将軍塚大日堂や京都駅、京都タワー、ホテルの展望レストランなど
複数の送り火が一度に見える人気スポットは人数制限や抽選などがあります。
ゆっくり鑑賞したい場合はツアーや鑑賞プラン付きの宿泊などを
早めに予約をされることをお勧めします。
水やお酒を入れた盃や盆に送り火を映して飲むと
無病息災のご利益があるともいわれ、
風流に夏の終わりを楽しむのも一興です。
本来はご先祖様の霊を送る行事ですので、
(心の中で)そっと手を合わせることもお忘れなく。
送り火に合わせて「絵はがき」「扇子」「手ぬぐい」も販売されています。
通販もありますので、興味のある方は京都市観光協会の公式サイトをご覧ください。
点火場所と鑑賞スポット
各山での点火時間と鑑賞スポットや護摩木の販売場所などを掲載しました。
京都駅からの公共交通機関でのアクセス方法や鑑賞スポット周辺の地図は
五山送り火鑑賞スポットへのアクセスページをご覧ください。
点火場所 | 護摩木 | 鑑賞スポット | |
右大文字 20:00~ |
東山如意々嶽 (大文字山) |
銀閣寺門前・300円 15日12:00~19:00 16日6:00~14:00 |
出町橋 (鴨川と高野川が合流する鴨川デルタ付近) から北へ北山橋くらいの間の 鴨川公園(鴨川堤防・鴨川西側) |
妙・法 20:05~ |
松ヶ崎西山・東山 | 護摩木の受付はなし | 北山通・市営地下鉄「松ヶ崎駅」付近 高野川堤防(高野橋北)・松ヶ崎浄水場付近送り火終了後、涌泉寺にて 「題目踊」「さし踊」が行われます |
船形 20:10~ |
西賀茂船山・明見山 | 西方寺門前・300円 3日~15日8:00~16:00 (6日は受付なし) 16日8:00~10:00 |
北山通(北山大橋から北西)
送り火終了後、西方寺にて |
左大文字 20:15~ |
大北山 | 金閣寺門前・300円 5日9:00~14:30 15日9:00~15:00 16日7:00~14:00 |
西大路通(西院~金閣寺) |
鳥居形 20:20~ |
北嵯峨水尾山 | 右京区嵯峨鳥居本 小坂町府道50号線 八体地蔵付近・300円 13日~15日 10:00~16:00 16日9:00~15:00 |
広沢の池 (19:00~ 近くの遍照寺で灯籠流しが行われます 送り火が一緒に見られます どなたでも申し込めば回向の上 灯籠を流していただけます 遍照寺公式サイト) 渡月橋 (19:00~ 中之島公園付近で灯籠流しが行われます 回向は輪番で 天龍寺・大覚寺・清涼寺が行っています 嵐山灯籠流し公式サイト) 松尾橋・など |
送り火の起源は謎?
送り火の起源は山それぞれにあり、諸説あります。
代表的な右大文字だけでも少なくとも3つはあり、
俗説も多く謎だらけです。
ここではそれぞれの山の起源説と送り火の後に行われる行事などを紹介していきます。
右大文字
1・平安時代に弘法大師空海が始めた。
山麓にあった浄土寺が火災に遭った際、ご本尊の阿弥陀さまが山上まで飛翔し、
光明を放ったことから、その光明をかたどって点火したものを
弘法大師が「大」の字に改めたというものです。
2・室町時代に足利義政が始めた。
義政が合戦で亡くなった実子、義尚の冥福を祈るために
相国寺の僧・横川景三指導の下、家臣が行ったというものです。
3・江戸時代に近衛信伊(このえのぶただ)が始めた。
近衛信伊は「寛永の三筆」と呼ばれた能筆家(文字を書くのが上手な人のこと)で、
1662年に刊行された「案内者」に記載があるためです。
妙法
妙は鎌倉時代に、日蓮宗の僧・日像が西山にお題目の「南妙法蓮華経」から
「妙」の字を書いたものを元に、地元で山に点火したのがはじまりといわれます。
これには次のような話が伝わります。
ある日松ヶ崎の天台宗歓喜寺の住職、実眼の夢に白い狐に乗った翁が現れます。
その夢告によって京の町に出かけたところ、辻説法をしていた日像に出会います。
日像の話を熱心に聞き心服した実眼は自身も寺も日蓮宗に改宗し、
村人にも改宗を勧めますが拒まれてしまいます。
そこで日像を招いて講話をしてもらったところ、村人全員が改宗を決意し、
これに喜んだ実眼が太鼓を打ち鳴らし題目を唱えると、
村人もお題目を唱えて踊ったのがこの地区に伝わる
「題目踊り」の始まりと言われています。
日像もこれを記念して西山の南面に杖で「妙」の字を書き、
村人がそれにならって松明を燃やしたのが「妙」の送り火の始まりと言われています。
法は江戸時代に、西山にしか送り火がなかったために
僧・日良が新たに東山に「法」を書き、
それにならって点火したのがはじまりといわれています。
*松ヶ崎「涌泉寺」で送り火前日の15日20:00~と16日の送り火後21:00~行われる
「題目踊り」と「さし踊り」は京都市の登録無形民族文化財に指定されています。
題目踊りは日本最古の盆踊りといわれ、鎌倉時代に松ヶ崎の村人全員が
日蓮宗に改宗したことに感動して始まったといわれる宗教行事です。
輪の中心に太鼓が置かれ、太鼓の音に乗せて
「南妙法蓮華経」のお題目を独特の節回しで唱えながら、
扇子やうちわを回して踊ります。
踊りは素朴ですが、音頭は優雅なため「見る踊り」ではなく「聞く踊り」といわれます。
江戸時代には御水尾天皇の行幸があり、妻の東福門院と共に天覧されたことから
境内に掲げられる提灯に御水尾天皇のお名前が記されています。
さし踊りは太鼓の代わりに輪の中心に櫓が引き出され、その中で男衆が歌を歌い
それに合わせて踊ります。拍子木を打つ方もいて、こちらの方はにぎやかな感じです。
お題目踊は檀家さんのみで行われますが、さし踊りは一般の方も参加できます。
舟形
「舟形」は西方寺の開祖、慈覚大師円仁が留学先の唐から戻る時暴風雨に遇い
南無阿弥陀仏と唱えたところ、無事に帰国できたことからその船をかたどって
送り火が始められたといわれています。
また精霊舟(初盆の故人の霊や先祖の霊が冥府に帰る祭に乗る舟)ともいわれ
船首は西方浄土を向いているといわれています。
山麓にある「西方寺」で送り火終了後の21:00頃から行われる「六斎念仏」は
京都市の登録無形民族文化財に指定されています。
六斎念仏とは鉦(かね)や太鼓をたたいて、念仏を唱える民俗芸能で
空也上人(くうやしょうにん)と道空上人(どうくうしょうにん)がはじめたものです。
道空上人が広めたものは干菜系(ほしなけい)と言い古風で素朴なもので
一方空也上人が広めたものは空也系と言い、
踊りを伴い娯楽性の強いもので芸能六斎とも呼ばれます。
西方寺の六斎念仏は干菜系で、
個人的にはお盆の送り火にはこちらがふさわしい感じがします。
鳥居形
ふもとにある「あだしの」はかつて京都の三大風葬地の一つでした。
野ざらしにされた死者を弔うために弘法大師空海が石仏千体を刻んだといわれます。
その開眼供養の時に点火されたのがはじまりといわれます。
また鳥居本は愛宕神社への参道で、一の鳥居が立っていることから
愛宕神社との関係も考えられています。
*鳥居形だけは他の4か所と点火方法が違います。
般若心経が唱えられる中、点火時間になると親火から松明に火を移し、
一斉に走って108ある火床につきたてていくため、
「火が走る送り火」とも呼ばれています。
松明には松の根の脂の多い部分が使われるため、他山と違い温かみのある朱色が特徴です。
左大文字は起源が不明です。
左大文字は文字を書くように灯が灯されていくのが特徴です。
かつては「い」「一」「竹の先に鈴」「蛇」「長刀」なども
あったといわれますが現在では途絶えています。
翌日は「からけし」拾いへ
送り火を焚いた残りの炭を「からけし」といって
包んで玄関に掲げると厄除け・魔除けになり
また少量を砕いて飲むと腹痛が治り、病封じになるといわれます。
送り火の翌日には沢山の方がこの「からけし」を求めて各山に登られます。
特に銀閣寺(慈照寺)脇からハイキング気分で登れる大文字山は人気で
(とはいっても40分くらいはかかります)
朝早くから大きな「からけし」を求めて
子どもからお年を召した方まで沢山の方が山を登られます。
火床からは京都の街が一望にできる素晴らしい景色が広がりますので
地元の方に混ざってご利益を求めて早朝ハイキングに出掛けてみてはいかがでしょう。
(レジ袋や軍手などあると良いです)
*近年はまだ火のついた炭を持ち出そうとしたり、登山禁止時間内に山に登ってしまったりと
マナーの悪さが問題になることもあるようです。
いつまでも行事が続いていくよう、マナーと決まりごとはきちんと守っていきたいですね。
銀閣寺からのちょっとおススメ。
銀閣寺参道を西へ下れば哲学の道へ出ます。
南北へ約1.5㎞ほど続く道を琵琶湖疏水沿いにのんびり歩いてゆけば、
みかえり阿弥陀様と紅葉で有名な永観堂、絶景かな絶景かなの南禅寺、
桜の美しい琵琶湖インクラインなど、観光名所へと歩いてゆけます。
哲学の道の途中には公衆トイレがありませんので、
銀閣寺参道入口の公衆トイレか、
南禅寺公衆トイレをご利用の上散策すると安心です。
(公衆トイレではないのですが、
哲学の道・南の入口にある若王子神社には境内に休憩スペースがあって、
社務所に声をかけるとトイレをお借りすることができます。
もしもお借りすることがあればお礼を言って
きちんと神社にお参りしましょう。)